後見人・市民後見人・法人後見

誰が後見人になるのか、何ができて何ができないのかを、条文と統計の言葉で整理しました。

後見人には3つの担い手がある

成年後見人・保佐人・補助人(あわせて「成年後見人等」)を誰が務めるかは、家庭裁判所が決めます。件数は令和7年1月から12月までの実績です。

親族後見人 配偶者・親・子・兄弟姉妹など

7,014件(16.4%)

どういう担い手か
ご本人の家族が選ばれる形です。暮らしぶりを知っている強みがあります。令和7年の統計では全体の約16.4%で、内訳では子が最も多くなっています。

専門職後見人 弁護士・司法書士・社会福祉士など

司法書士11,966件/弁護士8,903件/社会福祉士7,280件

どういう担い手か
財産の管理や法律上の手続きが複雑な場合に選ばれます。件数では司法書士が最も多く、次いで弁護士、社会福祉士の順です。この3つで全体の半分以上を占めます。

市民後見人・法人後見 養成研修を受けた市民、社会福祉協議会・NPO法人など

市民後見人390件(1.1%)/社会福祉協議会1,615件(4.5%)/その他法人2,933件(8.2%)

どういう担い手か
地域の担い手です。市民後見人は自治体などの養成講座を修了した方、法人後見は社会福祉協議会やNPO法人などが法人として引き受ける形です。法人は担当者が替わっても引き継げるため、長い期間を支えやすいとされます。

親族が選ばれるのは全体の約16.4%で、親族以外が約83.6%です。前の年(親族約17.1%)より親族の割合は下がっています。申立ての際に親族を候補者として書いた事件は約19.7%にとどまります。

誰が選ばれているか(令和7年・関係別件数42,732件)

成年後見人等と本人との関係件数割合
親族 7,014 16.4%
 うち 子 3,647 親族内 52.0%
 うち その他親族 1,329 親族内 18.9%
 うち 兄弟姉妹 1,053 親族内 15.0%
 うち 配偶者 523 親族内 7.5%
 うち 親 462 親族内 6.6%
親族以外 35,718 83.6%
 うち 司法書士 11,966
 うち 弁護士 8,903 24.9%
 うち 社会福祉士 7,280
 うち その他法人 2,933 8.2%
 うち 行政書士 2,235 6.3%
 うち 社会福祉協議会 1,615 4.5%
 うち 市民後見人 390 1.1%
 うち 社会保険労務士 214 0.6%
 うち 精神保健福祉士 79 0.2%
 うち その他個人 60 0.2%
 うち 税理士 43 0.1%

関係別件数とは、成年後見人等が該当する「関係別」の個数を集計したものです。 1件の事件に複数の成年後見人等がいる場合は複数の「関係別」に数えられるため、事件の総数とは一致しません。「—」は資料に割合の記載がないものです。

条文が書いていること

下に引いたのは、法令の条文そのままです。要約は入れていません。

条文後見人は、本人の意思を尊重しなければならない
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

財産の管理だけが仕事ではありません。条文は「意思を尊重し」を先に置いています。

根拠:民法 第858条(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)(e-Gov法令検索)

条文住まいの処分には、家庭裁判所の許可が要る
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

住まいは暮らしの土台なので、後見人の一存では動かせない仕組みになっています。

根拠:民法 第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)(e-Gov法令検索)

条文誰を選ぶかは、本人の意見を含めて家庭裁判所が決める
成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

この条文は、後見人が法人でありうることを前提に書かれています。法人後見の根拠です。また「成年被後見人の意見」を考慮すべき事情として挙げています。

根拠:民法 第843条第4項(成年後見人の選任)(e-Gov法令検索)

条文市町村には、後見の担い手を育てる努めがある(高齢者)
市町村は、前条の規定による審判の請求の円滑な実施に資するよう、民法に規定する後見、保佐及び補助(以下「後見等」という。)の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るため、研修の実施、後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

「研修の実施」と「家庭裁判所への推薦」が条文に書かれています。市民後見人を養成する取り組みは、ここに根拠があります。

根拠:老人福祉法 第32条の2(後見等に係る体制の整備等)(e-Gov法令検索)

条文障害のある方については、条文の書きぶりが違う
市町村は、前条の規定による審判の請求の円滑な実施に資するよう、民法に規定する後見、保佐及び補助(以下この条において「後見等」という。)の業務を適正に行うことができる人材の活用を図るため、後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

老人福祉法と読み比べると違いがはっきりします。こちらは見出しが「推薦等」で、条文にあるのは「人材の活用」だけです。老人福祉法にある「育成」と「研修の実施」の文言が、こちらにはありません。

根拠:知的障害者福祉法 第28条の2(後見等を行う者の推薦等)(e-Gov法令検索)

条文制度の理念は、意思決定支援と身上保護
成年後見制度の利用の促進は、成年被後見人等が、成年被後見人等でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと及び成年被後見人等の財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと等の成年後見制度の理念を踏まえて行われるものとする。

「財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと」と明記されています。

根拠:成年後見制度の利用の促進に関する法律 第3条第1項(基本理念)(e-Gov法令検索)

条文市民の中から担い手を育てることが、法律に書かれている
成年後見制度の利用の促進は、成年後見制度の利用に係る需要を適切に把握すること、市民の中から成年後見人等の候補者を育成しその活用を図ることを通じて成年後見人等となる人材を十分に確保すること等により、地域における需要に的確に対応することを旨として行われるものとする。

市民後見人は個人の善意まかせではなく、法律が求めている担い手です。

根拠:成年後見制度の利用の促進に関する法律 第3条第2項(e-Gov法令検索)

市民後見人とは

最高裁判所の統計は、市民後見人を次のように定めて数えています。原文のとおりです。

市民後見人とは、弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士、精神保健福祉士及び社会保険労務士以外の自然人のうち、本人と親族関係(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)及び交友関係がなく、社会貢献のため、地方自治体等(※1)が行う後見人養成講座などにより成年後見制度に関する一定の知識や技術・態度を身に付けた上、他人の成年後見人等になることを希望している者を選任した場合をいう。
※1 地方自治体の委嘱を受けた社会福祉協議会、NPO法人、大学等の団体を含む。

この定義には「※3 当局実情調査における集計の便宜上の定義であり、市民後見人がこれに限られるとする趣旨ではない。」という但し書きが付いています。統計を数えるための線引きであって、市民後見人の資格要件ではありません。

選ばれた件数は390件(前年330件)で、全体の約1.1%です。数としては少数ですが、増えています。

法人後見とは

後見人は個人とは限りません。民法第843条第4項は、成年後見人となる者が法人である場合を条文の中に書き込んでいます。社会福祉協議会やNPO法人などが、法人として引き受ける形です。

担当する職員が異動や退職で替わっても、法人として引き継げます。ご本人の後見は長い年月にわたることが多いため、そこに強みがあります。令和7年は社会福祉協議会が1,615件(4.5%)、その他法人が2,933件(8.2%)でした。

どんな法人ならなれるのか

民法は、後見人になれる法人の種類や資格を定めていません。条文が定めているのは「なれない人」の方です。

次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者

民法第847条(後見人の欠格事由)です。「社会福祉法人でなければならない」「研修を修了していなければならない」といった資格要件は、条文のどこにもありません。

そのかわり、家庭裁判所が選ぶときに見る事情が第843条第4項に書かれています。法人については「その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無」です。

ここが実際上の分かれ目になります。その法人がご本人へサービスを提供している場合、利害関係があることになります。サービスを提供する側が、同時にご本人の財産や契約を代理する立場を兼ねると、契約の相手方と代理人が同じ側に立つからです。資格が要らないからといって、どんな法人でも選ばれるわけではありません。実際に法人後見の担い手として選ばれているのは、ご本人へ直接サービスを提供していない社会福祉協議会やNPO法人などです。

法人後見を始めたい場合は、まずお住まいの地域の中核機関へご相談ください。家庭裁判所がその法人をどう見るかは、事業の内容と利害関係の有無で変わります。

後見・保佐・補助 ─ 3つの形

成年後見制度には3つの形があります。分かれ目は、条文の言葉では判断する力がどの程度かです。

 後見保佐補助
条文の言葉 事理を弁識する能力を
欠く常況
事理を弁識する能力が
著しく不十分
事理を弁識する能力が
不十分
根拠民法 第7条民法 第11条民法 第15条
つく人成年後見人保佐人補助人
本人がした
契約の取消し
原則すべて取り消せる
(日用品の購入その他
日常生活に関する行為を除く)
第13条第1項の10種類の行為
について、同意なしなら
取り消せる
家庭裁判所が定めた行為
について、同意なしなら
取り消せる
代理権 財産に関する法律行為
全般(第859条)
審判で定めた行為だけ
(第876条の4)
審判で定めた行為だけ
(第876条の9)
始めるのに
本人の同意が要るか
条文に定めがない 代理権を付けるとき、
本人以外の請求なら必要
本人以外の請求なら
必要(第15条第2項)

表のいちばん下の行が大事なところです。補助と保佐には、本人の同意がなければ始められない、あるいは代理権を付けられない場面があります。ところが、いちばん重い後見には、その定めがありません。第7条には本人の同意を求める文言が置かれていないからです。

国もこの偏りを課題として法律に書いています。成年後見制度の利用の促進に関する法律 第11条第1号は、「成年後見制度のうち利用が少ない保佐及び補助の制度の利用を促進するための方策について検討を加え、必要な措置を講ずること」を基本方針として挙げています。

同意してくれないときは、本人が家庭裁判所に申し立てられる

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

民法第13条第3項です。補助人についても第17条第3項に同じ定めがあります。後見人等が「うん」と言わないことに対して、本人の側から家庭裁判所へ持ち込める道が、条文に用意されています。

後見人が、いつも正しいとは限りません

制度を勧める側があまり言わないことですが、最高裁判所は後見人自身による不正を毎年数えて公表しています。

件数(全体)被害額(全体)うち専門職うち専門職の被害額
平成26年831約56億7千万円22約5億6千万円
平成30年250約11億3千万円18約5千万円
令和3年169約5億3千万円9約7千万円
令和4年191約7億5千万円20約2億1千万円
令和5年184約7億円29約2億7千万円
令和6年188約7億9千万円27約1億5千万円
令和7年178約7億9千万円26約1億6千万円

件数のうえでは、親族など専門職以外による不正が大半を占めます。ただ、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職による不正も、毎年20件から30件ほど報告され続けています。令和7年は26件・約1億6千万円でした。「専門職だから安心」とは、この数字は言っていません。

数字の読み方について。資料には「平成23年10月及び平成24年4月に報告対象事件の定義を変更しているため、単純な年別比較はできない」と注記されています。また、各年の数値は「家庭裁判所から不正事例に対する一連の対応を終えたものとして報告された数値であり、不正行為そのものが当該年に行われたものではない」とされ、いずれも概数です。平成26年をピークに減っていますが、その理由はこの資料には書かれていません。

後見人がついていても、虐待の判断をするのは行政です

後見人が「これは虐待ではない」と述べたとしても、それで決まるわけではありません。障害者虐待防止法は、虐待を受けたと思われる障害者を発見した者に通報を義務づけており、その義務は誰に対しても等しくかかります。そして虐待にあたるかどうかを判断するのは、市町村などの行政です。

また民法第858条は、成年後見人に対して「成年被後見人の意思を尊重し」と定めています。本人の意思がわからないことを理由に、本人の意思を確かめる努力をやめてよい、とは書かれていません。

迷われたときは、確信がなくてもお住まいの市町村へご相談ください。虐待についてのページに、根拠となる資料の原文を載せています。

使うと決める前に

良いところと、負担になるところの両方があります。どちらも書いておきます。

助かること

財産を守れる
本人がした不利な契約を取り消せます(民法第9条ほか)。訪問販売や不要な契約から守る力になります。
手続きが進む
預貯金の解約、施設の契約、相続の手続きなど、本人だけでは進められない場面を代わりに行えます。申立ての動機でも「預貯金等の管理・解約」が最も多くなっています。
住まいは勝手に処分できない
居住用の不動産を売る・貸す・賃貸借を解除するには、家庭裁判所の許可が要ります(民法第859条の3)。歯止めが条文にあります。

負担になること

原則として途中でやめられない
後見は、本人の判断能力が回復するなどの事情がない限り続きます。「用事が済んだから終わり」にはなりません。
報酬が続く
後見人の報酬は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払われます。年ごとにかかり続けます。
誰が選ばれるかは選べない
申立てのときに候補者を挙げられますが、決めるのは家庭裁判所です。令和7年は、申立書に親族の候補者が書かれていた事件が約19.7%、実際に親族が選ばれたのは約16.4%でした。
本人の意向と食い違うことがある
後見人には広い代理権があります。だからこそ民法第858条が「意思を尊重し」と定めていますが、実際に食い違ったときは、家庭裁判所や監督人へ相談することになります。

市民後見人になるには

お住まいの地域の中核機関が開く養成研修を修了し、名簿(バンク)に登録したうえで、家庭裁判所に選任されてはじめて市民後見人としての活動が始まります。

尾張東部圏域瀬戸市・尾張旭市など

特定非営利活動法人 尾張東部権利擁護支援センター

研修
基礎研修(5日・22時間)と実践研修(6日・29時間)で構成されます。2年をひとつの期として実施されています。
窓口
尾張東部権利擁護支援センター 市民後見人養成研修

愛知県県による研修

愛知県市民後見人等養成研修

位置づけ
県が市町村と協力して人材の育成・活用を図るものです。老人福祉法第32条の2第2項は、都道府県が市町村への助言その他の援助に努めるよう定めています。
窓口
愛知県 市民後見人等養成研修

研修を修了しても、すぐに誰かの後見人になるわけではありません。名簿に登録し、家庭裁判所が選任してはじめて始まります。令和7年に市民後見人が選ばれたのは390件(全体の約1.1%)で、前年の330件から増えています。

この頁について

条文はe-Gov法令検索の法令データから、印刷されている文言のまま引いています。統計は最高裁判所事務総局家庭局の資料の数字をそのまま写し、頁を記しています。

誰を後見人に選ぶかを決めるのは家庭裁判所です。この頁は制度の説明であって、個別の事案についての判断ではありません。お困りのことがあれば、お住まいの市町村の窓口、地域の権利擁護センター、家庭裁判所の後見センターへご相談ください。

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